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マ王休みます

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■ 前 編 ■

「なんだか久しぶりだなぁ。こうやって乗せてもらうのって」
 手綱を握るコンラートの胸に上体を預けて。ユーリが小さく笑う。
「一生懸命お教えした甲斐あって、上手になられましたからね」
「あー、でもやっぱ耳にアブが入ったら、やっぱりダメだと思うぞ」
「アブ?――ああ、あなたの入城の時の」
 遠い昔、ユーリがこちらの世界へ初めてやって来た時のことを思い出す。馬に乗れなかったユーリを、せめて血盟城に入る時くらいはとアオに乗せて。艶やかな青毛の牝馬に騎乗する若き王は、それはそれは気高く美しかったのだけれど。耳の中に紛れ込んだ羽虫に馬が暴走して、投げ出され、落馬しての入城だったのだ。
「型破りで派茶滅茶で暴走するのは、初っ端からでしたね」
 幾ら細身の二人だといっても、成人男子二人を乗せてそうそう駆けさせるわけにもいかず。急く気持ちを抑えて、それでもできる限りにと馬を励ます。
「だから悪かったって」
 昔話に混ぜた揶揄に、ユーリは不貞腐れながらも詫びて。拗ねたように胸に擦りついてくる。
「寒いですか」
「ん、平気」
 腕の中のユーリを抱えなおすと、その拍子に濃厚な血の匂いが立ち上る。
 ユーリが自分の魔力で傷は塞いだが、流れ出た血液はモスグリーンだった上着の袖を黒く染め変えていた。
 王である自分の身は、何よりも優先されて守られなくてはならないものだと。知っているはずなのに。目の前で傷つけられようとしている小さな命の前では、そんなことも何処かへ行ってしまって。
 ユーリがそういう性格だということこそわかっていたはず。なまじそこそこ腕も立つものだから油断していたのだ、とコンラートはもう何度も繰り返した後悔をする。
 お忍びで王都のはずれの森まで遠乗りに出かけ、そこでトラブルに首を突っ込み。強盗に襲われているところを助けるにしても、少し外れて警備も付いてきているのだから、彼らに任せればよかったのだ。
 ただ、それを止めなかったのは自分の判断ミスだ。王都のそばで犯行に及ぶなど、素人かと、そんな油断もあったかもしれない。そして思いもかけない伏兵に手間取っているうちに、ユーリが。
 すぐに追いついた警護兵は強盗団を取り押さえ、襲われていた家族も無事だったが、ユーリの右腕は庇った子供の代わりに肩から二の腕にかけて切り裂かれていた。
 抑える指の間からもあふれていた血。蹲ったその元の赤黒い血溜まり。
 コンラートに凭れるユーリの顔は、皮膚に透ける血の色も失って不吉なまでに白い。ふうと息を吐いて、だるそうに目を閉じる。
「ユーリ?」
 呼びかけにももはや答えはなく。
 傷はすぐに塞いだのだし、出血が多くてもあれくらいで死ぬわけはないとわかっていても。それでも脅迫的な乱暴さで嫌なことばかりが頭の中を埋める。叫びだしそうになる恐怖を奥歯で噛み締めて、一刻も早くと馬を急かす。何度も何度も、その脈動を確かめながら。


「コンラート、あなたが付いていながら何ということですか! 陛下にお怪我を負わせるなどっ」
 ギュンターが声を荒げる。無理もない。魔王が血まみれになって意識を失って帰ってきたのだ。
「責任を感じている」
「…まぁ、陛下の無謀は今に始まったことではないですし。あなたばかりを責めてもせんのないことですけど」
 コンラートの硬い声に、少し落ち着きを取り戻してギュンターは嘆息するが。王佐の視線を受けて、宰相が言いにくそうに口を開く。
「ただ、さすがに今回は庇いきれんぞ。お前が付いているから余計に、陛下は安心して無茶をするんだと、そのような話も出ているのだから」
 魔王陛下とその護衛の主従を越えた関係はすでに誰もが認めるところだ。だが、ウェラー卿だけが魔王の寵愛を受けている現状に不満を持つ貴族もいる。
 コンラートが政治に一切口を出さない護衛というポジションを維持しているせいで、突き上げはそれほど激しくはないが、足元を掬おうと虎視眈眈狙われていることには変わりはなかった。
「せめて怪我が治るまでお側は遠慮しろ。これ以上貴族たちを刺激するな」
 それでも随分と甘い処分は、それ以上は肝心の魔王が許さないからだ。
 だが、当事者ながらその辺りがいま一つわかっていない馬鹿な弟は不服らしい。思い詰めた目の中に更迭処分の文字が見える。
「はっ。お前の解任などあの小僧が許すものか。せいぜい暫くの間は反省しているポーズを貴族たちに見せておけ」
 そう告げながら、コンラートの青い顔に、だがこいつにも監視が要るなと、グウェンダルは弟の幼馴染でもある配下を思い浮かべる。
 今回の失態を思いつめて失踪でもされたら、今度は魔王が大騒ぎだ。
 そこへ慌ただしく近衛兵が飛び込んできた。
「コンラート閣下っ、陛下がお目覚めになられたので至急お越しください」
「あ――いや、俺は遠慮するよ」
 とっさに踏み止まってギュンターにその役目を譲ろうとしたコンラートに、近衛兵が切羽詰まって言葉を重ねる。
「いえ、閣下がお越しください! その…陛下が、少々…取り乱されておいでで」
 駈け出したコンラートが魔王の寝所に近づくと、そこは既に騒然としていた。
 押しつぶしたような叫びは確かにユーリの声。驚いて部屋に飛び込むと。
「ユーリっ」
 兵士が二人がかりで取り押さえているのは、確かにユーリで。薬で落ち着かせようとしているのか、ギーゼラが薬包を手に口を開けさせようとするが、ユーリは引き結んだまま首を打ち振って抗う。いつもはさらさら音をたてて流れる黒髪が、縺れて貼り付いているのは涙のせいか。
 コンラートの姿を認めほっとした兵士の拘束が緩んで、振りほどいたユーリが駆け寄ってくる。が、二、三歩したところでぐらりと傾いで。慌てて抱きとめると、爪を立ててしがみついて声を上げて泣き出す。
 尋常ならない様子に狼狽しつつ、それでもぎゅっと抱きしめた。
「落ち着いて下さい、ユーリ。どうしました?」
 戸惑いを隠して、努めて冷静な声で呼びかける。
「ユーリ。もう大丈夫だから」
 泣いて息を詰まらせる背中をゆっくり撫でながら、何度も名前を呼んで慰める。

「陛下、まだ起き上がられるのは無理ですから。どうぞこちらへお休みください」
 ギーゼラの勧めに、時折しゃくり上げるくらいに落ち着いたユーリをそっと引き離そうとすると、いやいやと首を振ってその腕を握りしめる。異様ともいえる幼い仕草に、まだ混乱しているのかとコンラートはそのままユーリを抱き上げ、長椅子に移動した。
 コンラートの膝の上でユーリはじっとしがみついている。
 先ほどから動かない視線が気がかりで、視線の先でかざした手を動かしてみると、ゆっくりユーリは顔を上げる。泣き疲れて放心したような頬に、涙の痕がいたわしい。
 ガラスのようにコンラートの姿を映す漆黒の瞳。政務を執ったり、悪だくみをしたり、笑ったり、泣いたり―― 一時も休むことなくくるくる変わる目の色は、今は静かに澄み渡っている。
 見えてはいるようだけど、そこにいつもの溢れるほどの感情は窺えない。かといって隠しているわけでもない。気持を殺すときにも――王としての職務中は間々求められることである――ユーリの目には隠しているという硬さが上る。
 それが何のてらいも熱も感じさせず、ただ真っ直ぐにコンラートの姿だけを映すのだ。
 出血して失神した後の混乱にしては只事ならない様子に、徐々にコンラートは気づき始めていた。
「ユーリ」
 呼びかけに、じっと見つめたまま小首を傾げる。なに?――と尋ねるみたいに。
「ユーリ――声は、声は出せますか?」
 黒い瞳の中に映るコンラートが焦る。何も言わずにユーリは胸に顔を埋める。軍服の襟を縋るように握りしめて。
 先ほどまで声を上げて泣いていたのだ。声は、出るのだ。ならば。
「ユーリ、何か言ってください。しゃべってみて」
 覗き込んでも襟の先に視線を当てたまま、身じろぎもしない。
「ユーリっ」
 焦燥が胃の腑をぎゅっと掴み上げる。
 離さないとばかりにコンラートにしがみついて、ユーリは何も言わない。

 極度の貧血でまた直に気を失うように眠りについて、ユーリは寝台に戻された。
 失った血が元に戻れば徐々に意識も明瞭になるだろうとギーゼラは言ったが、そうであればいいと願いつつ、それが希望的な観測でしかないとも思っていた。
 頭部の打撲の有無を何度も確認されたが、ユーリの怪我は右上腕の刀傷だけだ。それはそばに居た…そばに居て守れなかった自分が一番よく知っている。
 ギーゼラも、思いもかけないユーリの反応に戸惑っているのだ。
 映すだけだった瞳を閉じて、眠るユーリはなんら変わらぬ表情で。
 血の気の薄い顔色を除いては、いつもと同じ寝顔。こうやってじっと見つめていると視線に気づいて目を覚まし、気だるげな表情で「なんだよ」とはにかみながら聞いてきて――寝起きの半分閉じた瞼の下で、瞳をきらめかせて――。
 今度目を覚ましたなら、何事もなかったかのように、いつものそんな風であればいいと。祈るような気持で見守る。



■ 後 編 ■

 視界の中のユーリが、花が綻ぶように笑う。それを見て、また、自分が険しい顔をしていたことにコンラートは気がついた。
「あぁ、すいません。なんでもありませんよ」
 手を伸ばしてユーリの頭を撫でる。艶やかな絹糸のような髪に滑らせて撫でていると、気持ちよさそうに目を眇めて、コンラートの肩に寄り添う。
 コンラートが怖い顔をしていると不安になるらしく、ユーリはこうやって、それはそれは綺麗に微笑みかける。
 それが愛想であったり媚でないことは、どこまでも清らかな表情でわかる。
 それに。今のユーリにそんな作為は成し得ない。
 誰かの庇護なしには生きてはいけない。そんなユーリの本能が微笑ませるのだ。
 見る者が守り助けずにはいられないように。ユーリが生きるために。

 ユーリが目を覚まし、言葉を失ったことが発覚すると、宰相はただちに魔王のまわりに緘口令を敷いた。眞魔国始まって以来の勢いで改革を進める今の政権は、ユーリの求心力で保っている。心神喪失状態のユーリの様子を外に漏らすことは、即、政治の混乱をもたらす。
 とりあえず、魔王陛下は体調を崩されて臥せっておられる、と魔王の公務をすべて止めて。
 眞王廟から駆けつけてきた大賢者は、次の魔王の神託は下りていないと告げる。
 ならば。ユーリの不調は一時的なものだと信じて、今の体制を維持するまでだと、宰相は心に決める。
 幸いにというか何というか。魔王の不在には慣れている。


 スープをひと匙、口元へ持って行く。
「ほら、ユーリ。口を開けて」
 スプーンの先を下唇に触れさせれば、反射のように開くそこへそっと流し込む。
「美味しいですか?」
 確かに嚥下したのを見届けて、またひと匙。親鳥が雛に餌を遣るようというよりは、もっと植物的だと思えば、暗い思いに囚われそうで、コンラートはユーリに食事を摂らせることに集中する。
 3日経って、こうやって今では飲み下すことが出来るではないかと、思い直す。
 全く食べ物を受け付けなかったのを、目先の生死に関わると、少しずつ少しずつ慣れさせてここまでしたのはコンラートだ。と、いうより。何にも関心を示さず、反応を見せない人形のようなユーリが、唯一意志を表示するのがコンラートの存在なのだ。
 起きている間中ずっとその存在を手放さず、目覚めた時に傍にいなければ錯乱状態に陥る。そのためコンラートは、あれからずっと傍にいる。
「あなたがそこまで俺に執着してくれていたなんて――日頃のそっけなさは何だったんですか」
 こんな状態で思い知らされるなんて――取り返しのつかないような焦燥を感じないように軽い口調で詰ってみせて。程よい量を匙に掬い取る。ユーリが飲み込んだのを見計らって、また口へ運ぶ。
 皿の三分の二ほどもそうやって食べたことに気がついて、コンラートは手にしていたスプーンをユーリの手に握らせてみる。
「そう、しっかり持って」
 手を添えてスープを少量掬わせて、口元へ持っていく。コンラートに促されるままに二匙食べて。次は一人でやってみてと手を離したなら、そのままぱったりと動きを止めた。
 そう思うようにはいかないかと、落胆を笑むことで誤魔化して、再びユーリの右手に手を添える。
「ゆっくりでいいです。これまでと同じように、ひとつずつ出来るようになっていきましょう。できるまでいつまでも付き合いますから」
 どうしてこんなことになったのだとか。もう何度も何度も考えて、それでも答えなど出ない問いを繰り返し、そんなことにも草臥れた。
 それよりも今はユーリを生かせること――それが最も大切なことで、自分こそが為すべきことだ。
 暗い方へ行きそうになる視線を無理やり逸らせて、ただ、前を。
 微笑みを浮かべることだってできるようになったし、食事を摂らせることもできるようになった。自分の為すべきことは――。


 ユーリが言葉を失い、病を得たと偽り籠るようになってから一週間ばかり。一年で最も寒い時期のはずが、何の気まぐれか恵みか、晴れて風のない、暖かな日だった。
 暖炉で火をくべることも必要ないくらい、日当たりの良い王の私室は温められ。柔らかな陽射しが差し込む窓際へ長椅子を寄せて、その恩恵を受けていた。
 青空に映える雲を窓越し眺めるユーリの隣に侍る。
 十五歳で即位して百年ちょっと。王であろうとユーリはずっと走り続けてきた。思えばこんなにもゆっくりと時間を過ごすことなどなかったのだ。
 ふと、眞魔国の王じゃないユーリ、自分だけのユーリだと思えば笑みがこぼれた。
 ――ああ、俺だけのユーリだ。
 ほうと息を吐けば、胸に詰まっていた重苦しいものがそこに溶けて出ていく気がした。かわりに麻痺したようになっていた心が感じたのは、たしかに歓喜で。
 胸の底からあぶくのように浮かび上がってきたそんな考えは、重く澱んでいた水面を揺らした。
 望むことさえ不遜だと、諦めていた存在がここにある。俺だけを求めて、俺がいないと生きてさえいけないユーリ。
 やさしい衝動のままに愛しい存在を抱きしめる。引き寄せたら、ユーリは自然と頬を胸に擦り寄せて、安心するかのように目を閉じる。ふわりと暖かな身体。昼下がりの柔らかな陽射しが漆黒の髪に光の輪を描く。
 国政も根回しも駆け引きも。何にも患うことのない日々。ただ二人だけでいられることが幸福で。
「もうずっとこうしていましょう。あなたは俺だけのものだ――」
 腕の中の愛しい人が、返事を返すように身じろいだ気がして嬉しくなる。
「ええ、ずっとここにいます。あなたは俺がいないと生きてはいけないでしょう」
 ユーリの頬を両手で包んで上を向かせる。
 怖いくらいに整った美貌は、表情が抜け落ちるとますます作り物めいて。溢れる生気がもたらしていた、見る者を圧倒する迫力のかわりの、脆い細工物のような繊細さが胸を苦しくさせた。
 ひと頃よりは随分顔色もよくなって、象牙みたいな肌の奥からは淡く血の色が透ける。
「あなたが死ぬまでずっとこうやって――俺が先に死ぬときも、必ずあなたを連れて行きますから」
 澄んだ硬質の瞳。脆く美しい造形を手にして、そっと背筋がそそける。きれいできれいで、切なさに耐えきれなくなった目を閉じて。ついばんだ唇の、確かなぬくもりと柔らかな感触に確かに生身を感じた。

 肌寒さを覚えて目を開けたら、ずいぶん陽は陰っていた。日だまりを作っていた太陽が隠れると、春はまだ遠いのだと知らしめる灰色の世界が窓の外に広がる。
 風邪をひかせると事だと、もたれかかって眠るユーリを起こさないようにそっと身体をずらすが。眠っていたとばかり思っていたユーリの黒い瞳と目が合った。
「先にお目覚めだったのですね」
 自分ばかりがうたた寝をしていた状況に気恥ずかしいものを覚えつつ、冷えてはいまいかとその肩に手を伸ばしかけて。
「ん。あんたよく寝てたから」
 少し喉に絡んだ、だけど甘い声がした。
「幸せそーな顔して爆睡してたぞ」
 ゆるやかに笑んだユーリの表情。わずかに眇めた目の奥の、確かな意志の煌めき。
「どした?」
「……を…」
 促されて発した言葉はかすれて音にならなかった。
「夢を、見ていました――」


 それが夢でなかったことは、一週間ばかり公務を止めたそのツケを払わされる中で思い知らされた。まぁ、忙殺されていたのは主にユーリだけれど。
「おれはマッタク覚えてないんだぞ――それを一週間ものんびりしてとか言われてもさっ」
 回廊を駆け抜ける速さで移動しながら、ユーリはもう何度目かの愚痴をこぼす。
「元はと言えばあなたが抜け出して遠乗りに行ったのが。無茶をして怪我したのが。でしょ?」
 後ろから付いて行きながら、これも何度目かになる台詞を返すと、この辺りまでは記憶のあるユーリは口を噤む。
「…けどさぁ、なんかすっかり身体がなまっちゃって」
 すっかり駄目だと。そう言って肩を落とす背中は、見た目にはわからないけれど。
「落ちた筋肉はまたつければいいですから」
 軽く宥めるみたいに叩くと、ユーリが歩みを止めた。ゆっくり振り返ったその視線はコンラートを見て、でもその向こうを見ている。その表情にぞくりと心臓が嫌な鼓動を刻むが。何かを探すみたいに視線が揺れて、記憶を探っているのだとわかってほっとした。
「どうしました」
 まだ考えているらしく、緩慢な口調が返る。
「さっきの。なんか引っかかる」
「さっきの?」
「ポンポンって背中を叩かれて――」
 寄せた眉間の皺を人差し指で揉みながら。
「――なんか、こう、イメージだけあるんだけど思い出せない…すげーいい記憶なんだ。ふわふわって嬉しくって…」
 幸福な記憶が思い出せない、勿体ない、と悔しがる。
「それより、お急ぎになった方が」 
「あっヤバ、グウェン待たせてんだったっ」
 いよいよ疾走し始めるユーリを追いかけながら、コンラートの口元には甘くほろ苦い笑みが浮かぶ。
 心の隅の柔らかく重苦しい蜜月の記憶。
 たとえユーリが覚えていなくても、この世界の中でたった二人だけだと錯覚してしまうくらいに寄り添い合っていた記憶は。確かにここにあるのだ。


End

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