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彼氏の束縛がすごいです

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 両の手首は頭上でひとまとめにして、細引きで寝台の縁に繋いだ。痕がつかないように縛りはしたが、このように動いては擦り傷を残してしまうだろう。
 コンラートが腰を深いところまで進めるたび、ユーリは短い喘ぎを零して身をくねらせる。
 二の腕の内から腋、反らした胸、浮き上がったあばら。肌に手を這わせるとしっとり吸いつくよう。日に曝されることのない場所は滑らかで白々とぬめるような質感だ。
 きつく眉根を寄せて苦悶の表情にも見えるのに、決して嫌がっていないことは、もっとと押し付けられる動きで知れる。
「そんなに気持ち良いですか」
 ユーリは眉間の皺を深くして顔を背けた。
「嘘ばっかり」
 コンラートはユーリに被さっていた身体を起こした。ごく浅いところで腰をゆらす。ユーリの内腿がひくりと動いた。じれた身体が引き摺り込もうと蠕動する。
 奥までは踏み込まぬように抜き差しを繰り返すと、ああ、とユーリの口からもどかしげな声が零れた。
「欲しい?」
 コンラートの問いかけに、躊躇いながら口を開き、湿らせるように唇を舐める。赤く色づいていた唇がぬらりと艶を纏った。
「ちゃんと言って下さい」
「欲しい。もっと気持ち良くして」
 掠れる声に応えるように、最奥まで押し込んだ。
「ひ、あ…あ」
 衝撃にユーリの身体が跳ねる。寝台に繋いだ縄がびん、と張った。折れそうなくらいに背中を反らして。
 そこで抽挿を重ねれば、ああ、ああ、と煩いほどに声を上げる。更にユーリの足が腰にまわって。
「そんなに締められると動けないですよ」
 浮き上がる尻を撫でてもユーリは聞こえないかのようにきつく絡める。晒されたユーリの喉がひくりと震えた。
「ほら。もどかしいんでしょう?」
 膝を掴んで引き剥がして、コンラートは熱く濡れた体内から抜け出た。
「いやだ、コンラッ…」
 ぽかりと開いた秘所からは、追いかけるように一度目に注いだ白濁が滴る。
「コンラッドっ」
 寝台に繋がれ引き止めることもかなわず、ユーリは身体をよじらせるだけだ。
「やだ、まだっ」
「わかっています、沢山してあげるから。でもあれじゃあ動けないでしょう」
 目尻に浮かぶ涙を吸い取って、だから、と優しく語りかける。
「こうすれば、もっとあなたを良くして差し上げられる」
 コンラートが手にしたのはユーリの手首を戒めるのと同じ細引きだった。
 左足を持ち上げると膝下に二度ほど巻き付け、膝を曲げさせる。そのまま腿の下あたりと一緒に縄をかけて、足を二つ折りにした状態で縛りあげる。反対の足もまた同じように。立て膝のまま動けないようにしておいて、コンラートはユーリの足を割り開いた。
「ああ、すっかり閉じてしまいましたね」
 そう蕾を撫でるとユーリは過剰なまでに反応した。心なしか息も先程より荒い。ユーリは新たな束縛に昂ぶっていた。
 口は閉じていても、初めに注いだ潤滑剤とコンラートの精液で濡れそぼったユーリのそこはまったく柔らかく、コンラートのものを引き込んでいく。
 ユーリの足を胸に付くまで折り畳むと、肌に擦れる縄の刺激に、また興奮するようだった。
 今までと違ったふうにユーリの肉がひくりひくりとコンラートを包み込む。コンラートが揺するのとはまた違ったリズムでユーリの足がゆらゆらする。
 さてはとユーリの膝をどけさせてみると、ちょうど縄が当たる胸のとがりが真っ赤にしこっていた。
 ユーリは自ら擦りつけて愛撫を加えていたのだ。コンラートを締め付けるのがこの刺激によるものだと知れば、また熱が上がった。
「すけべ」
 顔を背けるユーリの耳に囁いたら、彼はゆっくりとコンラートの方を向いた。滴るように黒く濡れた瞳が眇められて。淫蕩な息を零すばかりだった唇がゆっくり弧を描いた。
「あんただって」
 コンラートがユーリの愉悦を全て掴んでいるのと同じように、コンラートだってユーリの手の内なのだ。



 コンラートは目を覚まして、夢であったことに安堵の息をついた。額に手をやると冷たい汗に触れた。
 怖い夢だった。
 ユーリとの性交の夢。夢の名残に身体は熱を帯びてはいるが、それよりも背中が緊張に強張っていた。
 夢の中では自分の所業に眉を顰めるまっとうな自分もいて、そんな意思とは別のところでユーリを嬲る、自分自身を止められないことがひどく苦痛だった。
 確かに冗談半分に両手を拘束する程度のことなら、したこともある。先日ユーリが誕生日プレゼントだと言ってくれたのは裸身にリボンを飾ったユーリ本人だった。ただ解いて頂くだけでは能がないかと、そのような戯れを混ぜたのだ。
 しかし、恐ろしい夢だった。自分に嗜虐趣味があるなんて、ユーリに思われたくない。
 夢ならば、とても楽しい夢なのだが。
 少し早かったが、すっかり目が覚めてしまった。寝台を下りて窓を開けると、朝靄まじりの空気がひんやり流れ込んできて、甘だるい夢の名残を浚っていく。
 艶やかな媚態だとか感じ入った声だとか――すっかり忘れ去るのはどうにも惜しいが、あと一時間もしたらユーリを起こしに行かなければならない。さて、あんな夢のあとで、自分はユーリの顔をちゃんと見られるのだろうか。



「おはようございます、陛下」
 コンラートの声に起こされて、ユーリは伸びをした。
「へーかじゃなぃ…」
 寝惚けた頭で無意識に返して、なんだか久しぶりの遣り取りだと思った。だけど、それよりも。両腕を頭の上に伸ばして、身体を反らして、さっきまで見ていた夢の内容を思い出した。
 慌てて腕を下ろし、なんとなく両手首をさすった。もちろん、そこには何の痕も残ってはいない。
 はっとして伺ったコンラートはユーリに背を向けてカーテンを開けているところで、ユーリの不審な行動には気が付いていないようだった。
 こっそり息を吐く。
 すごい夢を見ていた。
 コンラートとセックスしてる夢。それだけなら別にわざわざ夢にまで見なくとも、なのだが。
 両手は細い縄で縛られていた。一昨日のようにリボンを飾り結びにする、みたいなごっこじゃなくて。縄を何重にも掛け、指先が痺れるくらいに固く戒められていた。
 声が枯れる程に喘がされ、揺さぶられ。昂ぶり過ぎて意識を飛ばしても、顔に水差しの中身を浴びせられ無理矢理に引き戻された。なにやらまだ気管に引っかかっている気がする。夢だけど。
 やっばーい。おれってそういう願望あったのかぁ?
 どこまで連れていかれるんだろうっていう恐れが官能と入り混じって、背筋がぞくぞくした。いつもよりもずっと興奮して盛ったのは確か。
 いろいろ吹っ切って、ただコンラートのくれる快楽を追い続けた。互いの精液にまみれ、よだれでべたべたになって。卑猥な言葉で強請らされて――うわあああ。
 頭を抱える。がしがし掻きむしって。乱した髪の隙間からコンラートの背中を盗み見た。
 ああいうのしてって言ったら。やっぱ引くよなぁ。


End


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