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お寝惚け陛下

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 寝返りをうったら背中に冷えたシーツが心地良かった。そういえば首の辺りをぬるい汗が伝っていく。
 暑い。感じた不快が、意識を眠りの底から引き揚げる。
 更なる涼を求めて腕を這わせたら、何かに当たった。慣れた人肌を掴み直す。
 ところどころ角質化した手のひら。辿るだけで目に浮かぶ、線に盛り上がった切傷痕。
 指先で辿ったのがこそばかったのか、その手で捕まえられた。
 ああ、ごめん。起こしちゃったかな。
 だけど、その、自分のものより一回り大きな手につなぎ止められる確かさに安堵して、また意識は眠りの底目指して沈んでいく。



 ひどく物悲しい気分で目が覚めた。
 夢を見ていた。コンラッドが傍に居ない夢だ。
 自分は夢の中で夢を見ていた。コンラッドと共寝している夢を。
 それが夢だとおぼろげにわかっていて、だけど、夢なんだからと――せっかくこんな幸福な夢を見ているのだからと、その夢に取り縋っていた。
 けだるく身を起こせば、夢の記憶と悲しい気持ちがぽろぽろ剥がれ落ちていく。
 寝汗に冷えた夜着が気持ち悪い。今夜から掛布団をもっと薄いものに換えてもらおう。
 寝台から降りるのはそうっと。これ以上あの夢が壊れてしまわないように。
 そうっとそうっと。コンラッドのところへ。
 夢の中のおれの手をひいて、コンラッドのところへ連れて行ってあげる。


End


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